鉄道運転士に必要な免許|動力車操縦者運転免許の種類と取り方

鉄道運転士に必要な動力車操縦者運転免許の種類と取り方を解説する記事のアイキャッチ

当サイトの記事は、編集部が国土交通省・厚生労働省・警察庁などの公的機関と、鉄道会社・バス会社・交通局の公式サイトの公開情報を調べて独自に執筆しています。採用の区分や募集要項、制度は変わることがあるため、最新の情報は各社・各交通局の公式の採用ページで確認してください。

鉄道の運転士になりたいと思った時、最初に気になるのが「どんな免許が要るのか」ですよね。

結論から言うと、鉄道運転士に必要なのは国の「動力車操縦者運転免許」です。そして多くの場合、個人で取りに行くのではなく、鉄道会社に入ってから会社の養成の中で取ります。

この記事を読むと、免許の種類と運転できる車両、試験の中身、会社で取るのが一般的な理由、自動車の免許との違いが分かります。

目次

鉄道運転士に必要なのは「動力車操縦者運転免許」

先に結論

鉄道や軌道の車両を運転するには、地方運輸局長から動力車操縦者運転免許を受ける必要があります。免許は、動力車操縦者試験に合格した人に運転免許証を交付する形で与えられます。

『電車の運転にも、車みたいな免許があるの?』と思った方も多いはずです。

実はあるんです。「動力車操縦者運転免許に関する省令」という国のルールで、鉄道・軌道・無軌条電車の係員は、免許を受けた後でなければ動力車を操縦してはならないと決められています。

ここで言う「動力車」は、自分の力で走る車両のことです。省令では次のように分けられています。

動力車の分類含まれる車両
蒸気機関車蒸気機関車
電気車電気機関車、電車、蓄電池機関車、蓄電池電車
内燃車内燃機関車、内燃動車(ディーゼルカーなど)
無軌条電車トロリーバス

ふだん乗っている電車は「電気車」に入ります。架線のない路線を走るディーゼルカーは「内燃車」です。

免許がなくても運転できる場面はある?

省令には、免許がなくても操縦できる場合も書かれています。

1つは、運転見習中の係員が、免許を持つ人と同じ動力車に乗ってその直接の指導を受ける場合です。もう1つは、本線を支障するおそれがない側線で移動する場合です。

運転士の見習い期間に、指導役の運転士と一緒に乗って実際の列車を動かせるのは、この決まりがあるからなんです。

免許の種類と運転できる車両の早見表

12種類に分かれている

動力車操縦者運転免許は全部で12種類です。運転したい車両と、走る路線の種類によって、要る免許が変わります。

『どの免許を取ればいいのか分からない』という方のために、種類と運転できる車両を早見表にしました。

免許の種類運転できる車両(省令の別表一の要旨)主な場面
甲種電気車鉄道事業(新幹線・磁気誘導式を除く)などの電気車JR・私鉄・地下鉄の電車
甲種内燃車同じく鉄道事業などの内燃車非電化の路線のディーゼルカー
甲種蒸気機関車同じく鉄道事業などの蒸気機関車蒸気機関車
新幹線電気車新幹線鉄道の電気車新幹線
第一種磁気誘導式電気車・内燃車磁気誘導式鉄道の車両磁気誘導式の路線
第二種磁気誘導式電気車・内燃車自動運転装置の故障時に最寄りの駅・車庫まで操縦する場合自動運転の路線の非常時
乙種電気車・内燃車・蒸気機関車軌道事業(一部を除く)の車両一般に路面電車などと説明される
無軌条電車無軌条電車トロリーバス
動力車操縦者運転免許の種類と、それぞれで運転できる車両を対応させた早見表の図解

「甲種」と「乙種」の違い

甲種は、鉄道事業の車両を運転するための免許です。乙種は、軌道事業の車両を運転するための免許です。

一般には、路面電車が乙種に当たると説明されることが多いです。ただ、省令の条文では「軌道事業」という書き方をしていて、軌道でも一部は甲種の対象になります。

『路面電車の運転士になりたい』という方は、受けたい会社の採用ページでどの免許を取ることになるかを確かめておくと安心です。路面電車の仕事は路面電車の運転士の記事で紹介しています。

1つの免許ですべての車両を運転できるわけではない

甲種電気車の免許を持っていても、ディーゼルカーを運転するには甲種内燃車の免許が要ります。新幹線を運転するには新幹線電気車の免許が要ります。

ただし、すでに免許を持っている人が別の種類を受ける時は、試験の一部が免除される仕組みがあります。

新幹線の免許はどうやって取る?

新幹線の運転士を目指す場合も、最初から新幹線の免許を取るとは限りません。

JR東海の採用ページでは、駅係員、車掌、在来線の運転士を経て新幹線の運転士になる流れが紹介されています。研修では総合研修センターや現場で実践的なトレーニングを行い、訓練シミュレータも活用しているそうです。

新幹線の運転士の道のりは新幹線の運転士になるにはで詳しく紹介しています。

試験の中身は身体検査・適性検査・筆記・技能の4つ

順番に進む試験

動力車操縦者試験は、身体検査、適性検査、筆記試験、技能試験の4つです。身体検査に合格した人が適性検査と筆記試験へ、その2つに合格した人が技能試験へ進みます。

試験の中身を知っておくと、『自分に向いているかな』と考える材料になりますよね。4つの試験を表にまとめました。

試験主な中身(省令の定め)
身体検査視力(矯正可)両眼1.0以上かつ片眼それぞれ0.7以上、両眼視機能・視野・色覚に操縦に支障のある異常がない、各耳で5mの距離のささやき声を聞き取れる など
適性検査クレペリン検査、反応速度検査など
筆記試験法令(鉄道の技術基準の省令、運転の安全の確保に関する省令など)、動力車の構造・機能、運転理論 など
技能試験速度観測、距離目測、ブレーキの操作、ブレーキ以外の機器の取扱い、定時運転、非常の場合の措置

18歳未満の人と、免許を取り消されてから1年を経過しない人は受験できません。試験は免許の種類ごとに、原則として毎年2回行われます。

動力車操縦者試験を、身体検査・適性検査・筆記試験・技能試験の順に進む流れで示した図解

技能試験は「感覚」と「手順」の両方を見る

技能試験の項目を見ると、速度観測や距離目測のように、目で見て速さや距離をつかむ力が問われます。

一方で、定時運転や非常の場合の措置は、決められた時刻や手順をきちんと守る力を見る項目です。『運転がうまい』だけでなく、ルールどおりに動けることが大事にされているんです。

なお、技能試験だけ不合格だった人は、その後続けて受ける同じ種類の試験2回まで、適性検査と筆記試験が免除されます。

筆記試験ではどんなことを学ぶ?

甲種電気車の場合、筆記試験は「法令」と「構造・機能など」の2つに分かれます。

法令では、鉄道に関する技術上の基準を定める省令と、運転の安全の確保に関する省令を学びます。構造・機能などでは、安全に関する基本的なこと、電気車の構造と機能、運転理論を学ぶ形です。

『電気の仕組みまで覚えるの?』と驚く方もいるかもしれません。走っている途中で車両に不具合が出た時、仕組みが分かっていないと応急の処置ができないからなんです。

乙種や無軌条電車は道路のルールも学ぶ

筆記試験の法令の科目は、免許の種類で少し違います。乙種と無軌条電車では、道路交通法とその施行令も科目に入ります。

道路の上を走る路面電車やトロリーバスは、車や歩行者と同じ道を使うからですね。

会社の指定養成所で免許を取るのが一般的な理由

養成所の課程を修了すると試験が免除される

国土交通大臣が指定した養成所で第一類の講習課程を修了し、修了後2年以内の人は、身体検査・適性検査・筆記試験・技能試験の全部が免除されます。

『免許だけ先に取ってから鉄道会社を受けたい』と考える方もいるかもしれません。

ただ、実際には鉄道会社に入ってから、会社の養成の中で免許を取るのが一般的です。その理由は、指定養成所という仕組みにあります。

区分中身免除される試験
第一類の講習課程学科講習と技能講習修了後2年以内なら4つの試験の全部
第二類の講習課程学科講習のみ身体検査・適性検査・筆記試験

指定養成所を持つ会社では、社員が養成所で学科を学び、職場で技能講習を受けて免許を取る流れになっています。

例えば京王電鉄は、国土交通大臣指定の運転士養成所を持ち、免許の取得まで社内で一貫した教育・訓練をすると採用ページで紹介しています。東京メトロも、動力車操縦者養成所で運転士養成研修を行っています。

個人で取りにくいのはなぜ?

技能講習や技能試験は、実際の線路と車両を使って行います。線路と車両を持っているのは鉄道会社なので、個人で練習する場がほとんどないんです。

それに、免許を持っていても、鉄道会社に入れるとは限りません。鉄道運転士を目指すなら、まず「どの会社の、どの採用区分で入るか」を考えるのが近道です。

鉄道会社に入ってから免許を取るまでの流れの例
  1. 鉄道会社に入社し、駅係員などの仕事から始める
  2. 車掌などを経験し、社内の試験や選考に合格する
  3. 養成所で学科講習を受ける
  4. 職場で指導役の運転士と一緒に技能講習を受ける
  5. 試験に合格して免許を受け、見習いを経て1人で乗務する

実際に、会社の採用ページで紹介されている養成の流れを並べてみます。

会社免許を取るまでの流れ(公式の採用ページなどの例)
JR東日本研修センターで約3ヶ月の学科講習、配属先で現役運転士とペアの技能講習、技能試験の合格で免許取得(公式メディアの記事より)
京成電鉄駅係員と車掌を経験し、社内試験に合格後、動力車操縦者養成課程で座学と実技の講習に合格して免許取得
京阪電気鉄道車掌経験の後、適性検査・身体検査・選考試験を経て、約7ヶ月の学科講習と技能講習、技能試験の合格で免許交付
東急電鉄国交省指定の養成所「鉄道研修センター」で学科、各乗務職場で指導運転士とマンツーマンの乗務で技能を習得
近畿日本鉄道運転士になるには社内登用試験と国家試験の合格が要件

どの会社でも、社内の選考と国の免許の両方を通ることが運転士への条件になっています。

会社ごとの流れは違います。車掌から運転士へのステップは車掌から運転士へのステップで、全体の道のりは運転士になるにはで詳しく紹介しています。

免許を取った後も研修は続く

免許を取って1人で乗務できるようになった後も、学びは終わりではありません。

東京メトロは動力車操縦者養成所で、運転士養成研修とあわせてフォローアップ研修を行っています。JR貨物も、運転士養成学科講習のあとに新任運転士研修と運転士フォロー研修を置いています。

京阪電気鉄道の社員紹介では、経験3年と6年の運転士に特別な研修があると紹介されています。経験を重ねながら腕を磨いていく仕事なんですね。

研修施設で運転シミュレータを使って訓練する運転士の手元の写真

学校で学んだことが活きる場合もある

省令には、高校などの機械科や電気科で、動力車の構造・機能の科目を修めた人は、筆記試験のうち構造・機能の科目が免除される定めがあります。

『工業高校で学んでいることが鉄道の仕事に役立つかな』と考えている方は、こうした仕組みがあることも覚えておくといいですよ。

自動車の免許とはどこが違う?

『車の免許と同じように、教習所に通って取れるの?』と思う方もいますよね。

鉄道の免許と自動車の免許は、取り方も持った後の扱いもかなり違います。バスの運転に要る大型第二種免許と比べてみました。

比べる点動力車操縦者運転免許大型第二種免許
免許を出すところ地方運輸局長都道府県の公安委員会
受験できる年齢18歳以上21歳以上(受験資格特例教習を修了すると19歳以上)
取る場所会社の指定養成所が一般的自動車教習所など
試験身体・適性・筆記・技能学科・技能など
取った後運転できるのは会社の車両と路線バス会社に応募できる

鉄道の免許は会社の仕組みの中で取るもの、バスの免許は自分で取って会社を選べるもの、と考えると分かりやすいです。

JR西日本メンテックの採用ページでは、鉄道の免許は自動車の免許のような更新はないものの、定期的な適性検査が必要だと説明されています。

バスの免許を持っている人は有利になる?

省令の別表には、大型自動車第二種免許を受けている人を試験の免除の対象とする欄があります。どの試験が免除されるかは、免許の種類ごとに定められています。

ただ、鉄道会社に入るには会社の採用試験に通ることが先なので、バスの免許があれば鉄道の運転士になれる、というわけではありません。

『社会人から運転の仕事に就きたい』という方には、免許を先に取って応募できるバスの運転士という道もあります。バスの道のりはバスの運転士になるにはで紹介しています。

運転士ドットコム

バスやトラックの運転士への転職を考えている方へ

バスやトラックなど運転の仕事は、会社によって免許取得の支援や勤務の形、休日の取り方が大きく違います。一人で求人票を見比べるのが大変な時は、ドライバー専門の転職支援サービスに無料で相談して、希望に合う求人や条件を確かめてみましょう。

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鉄道会社の運転士は、各社の公式の採用ページから応募するのが一般的です。転職支援サービスは主にバス・トラック・タクシーなどの運転の仕事を扱っています。

鉄道運転士の免許についてよくある相談

知恵袋などでよく見かける相談から、鉄道の運転士の免許に関わるものを3つ選んで答えます。

相談1 薬を飲んでいても鉄道の運転士になれる?

大学3年生で鉄道業界を見ていて、飲んでいる薬のことが気になる、という相談です。

身体検査の基準には、操縦に支障のある病気や身体の機能の障害がないことが定められています。ただ、個別の薬や体調についてこの記事で判断することはできません。

不安な方は、主治医に相談したうえで、受けたい会社の採用の窓口に問い合わせてみるのが確実です。1人で抱え込まず、早めに確かめておきましょう。

相談2 別の種類の免許を取る時も、また長い見習いから?

甲種電気車の免許を持っている人が、甲種内燃車の免許を取って新しい路線を担当する時はどうなるの、という相談です。

省令では、すでに免許を持っている人が別の種類を受ける場合は、試験の一部が免除されると定めています。

ただ、どのくらいの期間、どんな講習を受けるかは会社の決まりによります。社内での具体的な流れは、所属する会社の規程で確かめることになります。

相談3 中学生のうちから準備できることはある?

将来、鉄道の運転士を目指していて、高校を出てすぐ就職したいという中学3年生の相談です。

鉄道の運転士の免許は18歳未満では受験できないので、まずは高校を卒業して鉄道会社に入るのが入口になります。多くの鉄道会社には高校生向けの採用もあります。

今からできるのは、目指す会社の採用ページを読んで、応募の条件や運転士までの流れを知っておくことです。視力などの身体の基準も、早めに知っておくと安心ですよ。

相談4 鉄道の運転士は人手不足?なりたい人は少ないの?

『鉄道の運転士は人手不足とよく聞くけど、なりたい人が少ないの?』という疑問もよく見かけます。

なりたい人の数を示す国の統計は見当たらないので、この記事では言い切れません。ただ、どの会社も運転士は社内で時間をかけて育てる仕組みなので、人を急に増やしにくいのはたしかです。

地方の鉄道でも、運転士を育てながら採用している会社があります。地方の鉄道の働き方は地方鉄道の運転士になるにはで紹介しています。

相談5 鉄道運転士を定年まで続けるのは難しい?

『運転士は定年まで続けられないと聞いたけど本当?』という相談もあります。

鉄道の免許には更新がない一方で、定期的な適性検査を行う会社があります。体調を整えて検査や会社の基準を満たし続けることが、長く乗務を続ける前提になります。

定年の後については、国の法律で65歳までの雇用確保が会社に義務づけられています。定年後も運転士として働く仕組みは嘱託運転士とはの記事で紹介しています。

鉄道の運転士の免許を目指す前に確かめたいこと
  • 身体検査の視力や聴力の基準を知っておく
  • 目指す会社の採用区分が運転士を前提にしているかを見る
  • 運転士になるまでの流れと、社内の試験の有無を確かめる
  • 勤務地の範囲と、転居を伴う異動の有無を確かめる
  • 応募できる年齢や学歴の条件を見ておく

よくある質問

鉄道運転士の免許の正式な名前は何ですか?

動力車操縦者運転免許です。国の省令で定められていて、地方運輸局長が交付します。電車を運転する場合は、甲種電気車などの種類の免許が要ります。

鉄道の運転士の免許は何歳から取れますか?

18歳未満の人は動力車操縦者試験を受けられません。高校を卒業して鉄道会社に入り、社内の養成で取るのが一般的な流れです。

鉄道の免許に更新はありますか?

自動車の免許のような更新はありませんが、定期的な適性検査が必要だと説明している会社があります。詳しくは会社の採用ページで確かめてください。

新幹線の運転には別の免許が要りますか?

要ります。新幹線を運転するには新幹線電気車の免許が必要です。JR東海の採用ページでは、在来線の運転士を経て新幹線の運転士になる流れが紹介されています。

鉄道の運転士の免許があれば、どの鉄道会社でも運転できますか?

免許は運転できる車両の種類を決めるものですが、実際に運転するには会社の社員として、その路線と車両の見習いや社内の基準を満たす必要があります。まずは会社に入ることが入口です。

まとめ

この記事の要点
  • 鉄道運転士に必要なのは国の動力車操縦者運転免許
  • 免許は12種類あり、運転する車両と路線の種類で分かれる
  • 試験は身体検査、適性検査、筆記試験、技能試験の4つ
  • 指定養成所の課程を修了すると試験が免除され、会社で取るのが一般的
  • 自動車の免許と違い、まず鉄道会社に入ることが入口になる
運転士ドットコム

運転士ドットコム 編集部

電車・バス・路面電車などの運転士の仕事内容、必要な免許、運転士になるまでの道のり、鉄道会社・バス会社の採用の入口、転職の進め方を、運転士を目指す人の目線で整理している情報サイトです。 公式サイト

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